退職前に有給休暇を全消化するのは当然? 日本の雇用システムが生む「社内圧力」の実態

退職時の「有給全消化ブロック」なぜ横行? 日本企業の悪しき慣習、解決のカギは労働者にも(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

あなたは退職するときに、年次有給休暇(有給、年休)を全消化していきたいと思いますか? もしもそう思っているとしたら、あなたは多くの人と同じです。J-CASTニュースが実施した読者投票では、約8割の人が「全消化したい」と回答しました。しかし、実際に退職経験のある人のうち、約2割が「社内で圧力を受けて全消化しなかった」と答えています。なぜ、労働者の権利である有給休暇を取得することが難しいのでしょうか。

この問題の背景には、日本の雇用システムが関係しています。日本の大企業を中心とする雇用システムは、「メンバーシップ型」と呼ばれるものです。これは、終身雇用が前提で、職務範囲が曖昧で、配置転換や転勤、残業の命令に対応しなければならないというものです。このシステムの利点は、チームワークや調整が上手くできることです。しかし、欠点は、職場の連関が強く、長時間労働になりやすいことです。また、暗黙の「社会的規範(ノルム)」が生じることです。

社会的規範とは、明文化されていないが、違反すると非難されるようなルールのことです。例えば、有給休暇を取得することが、仕事をサボっているとか、仲間を見捨てているとか、退職する人に対する敵意とか、そういう風に受け取られることがあります。これが「社内圧力」の原因になります。退職者は、有給休暇を取得することで、自分の評価や人間関係を損なうことを恐れるのです。

では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか。一つの方法は、法律の面から「時季指定権」を増やすことです。時季指定権とは、労働者が有給休暇の利用時季を決められる権利のことです。現在は原則5日間が対象ですが、これを全日数に拡大すれば、有給休暇の取得が容易になるでしょう。もう一つの方法は、雇用システムの変革です。メンバーシップ型から「ジョブ型」に移行することです。ジョブ型とは、欧米のように、職務範囲を明確に定めて、個人の能力や成果に応じて評価や報酬を決めるというものです。このシステムの利点は、労働時間や休暇の自由度が高いことです。しかし、欠点は、チームワークや調整が難しいことです。

どちらの方法も、一長一短があります。しかし、有給休暇を取得することは、労働者の権利であり、健康や生産性の向上にもつながります。退職するときに、有給休暇を全消化するのは当然のことです。社内圧力に屈せず、自分の権利を主張しましょう。